ユーシンから同角山稜 (後半)


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大石山への登りは、いきなりの急登で始まった。10分ほど登ると写真の休憩所が現れ、いったん傾斜が緩むが、またすぐ急な登りになった。

ユーシンロッジから大石山まで、水平に1km進む間に標高が500mアップする。丹沢では、しばしばこのような急登に遭遇するが、これくらいの斜度になると踵が地面から浮いたまま歩くことが多くなり、翌日以降の筋肉痛がひどくなる。
やがて、先日の季節外れの雪で白くなった丹沢主脈が見えてきた。
ユーシンロッジから1時間弱で大石山の由来となっている大石に到着。かなりの迫力である。


大石から大石山の山頂までは、意外に時間がかかった。なかなか着かないので、ひょっとして通り過ぎてしまったのかとも思ったが、そんなことはなかった。さすがは神奈川県、こんなにマイナーなコースでも、山頂にはしっかり指導標とベンチが設置されているのであった。

11時49分、大石山(1220m)に到着。山頂からの展望は丹沢屈指の素晴らしさではないだろうか。不動ノ峰から蛭ヶ岳にかけての稜線(丹沢で最も標高の高い部分)を真正面から見ることができる。しかも、うっすらと雪化粧していて、この景色を見られただけでも登ってきた甲斐があったというもの。

雨山峠からずっと誰にも会わなかったが、大石山で昼食をとっていると、人の歩く音が聞こえてきた。おそらく新松田からバスに乗って寄まで来た人達である。私はタクシーで時間稼ぎをしたはずなのに、早くも追いつかれてしまった。
大石山を出発してすぐ、とんでもないクサリ場が現れ度肝を抜かれた。長大な滑り台のような岩場である。写真に写っているのは一部分に過ぎない。



大石山から同角ノ頭にかけては、アップダウンの激しい痩せ尾根が続く。今回のコースは、地図(山と高原地図)に付属の冊子で唯一「上級コース」として紹介されている。危なっかしい所がたくさんあるのに、地図には「危」マークがひとつも付いていない。いちいち付けてられないということだろうか。

大石山まではほぼ予定通りの時間で歩けたが、大石山を過ぎてからは雪が出てきたこともあって、ペースが落ちてしまった。雪は凍結していないが水分が多く、これはこれで妙に滑りやすい。落っこちると大変なことになる部分がたくさんあって、けっこう神経を使った。
13時30分、ザンザ洞キレットを通過。ここで落ちると助からないかも。
雪のおかげで塔ノ岳もとても美しく見えた。



この日、同角山稜を歩いたのは、私の他に単独行のおばちゃんと、男女3人組のグループ。私が一番早くスタートしたのに、いつのまにか最後尾になってしまった。特に単独行のおばちゃんは歩くのが速くて驚いた。
14時01分、同角ノ頭(1491m)に到着。
この時点で予定より約30分の遅れ。17時05分のバスに乗るのはあきらめることにした。

ベンチに腰掛けてデコポン(1個目)のおやつタイム。
同角ノ頭を過ぎると、木道をたくさん歩いた。前方には檜洞丸。いったん200mほど標高を下げる。

14時46分、中ノ沢乗越。ここから石棚山稜へ登り返す。

15時07分、石棚山稜の登山道に合流。ここから先は3週間前に歩いたばかりだ。
本日4頭目の鹿に遭遇。立派な角を生やしている。獣臭をプンプン撒き散らしながら食事中。近づいても全く逃げようとしない。

15時23分、ツツジ新道に合流。一応、本日の最高地点なので少し休憩。木道に腰を下ろして、デコポン(2個目)のおやつタイム。それにしても、日帰りでスタートから8時間後に最高地点っていうのもすごい話だ。

ツツジ新道を下っていると、一人の男性と出会った。この人はなんと朝、大倉を出発して蛭ヶ岳を経由してここまで下りてきたんだそうな。しかもこんな雪のある日に! すごい人がいるものだ。

16時20分、展望園地。

17時05分の次のバスは18時58分発。2時間近くも間が空くので、ゆっくりしたいところだが、途中で日が暮れてしまっても危ないので、そこそこの休憩で出発。
17時10分、ゴーラ沢出合を通過。

この先は平坦で楽に歩ける道だが、もうかなり疲労がたまってきて、いつもより遅めのペースになってしまった。
17時55分、西丹沢自然教室。なんとか日没前に下山できた。1時間待って最終バスに乗ったときはもう真っ暗。

ところで、バスが中川温泉に着いたときである。なんとあのおばちゃんが乗ってこられたのである。私より1時間も早く下山、17時05分のバスに乗り、一風呂浴びて来られたということである。おばちゃんが速すぎるのか、私が遅すぎるのか…。たぶん両方だろう。



【まとめ】
まるで渓谷のような雨山沢、丹沢核心部のユーシン、すばらしい展望ととんでもないクサリ場の大石山、痩せ尾根だらけの同角山稜。初めてづくしの充実した一日だったが、めちゃくちゃ疲れたのも事実。新緑や紅葉の美しい季節にまた行ってみたいとは思うが、次回はどこかで一泊してゆったりと歩いてみたい。



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